2018年1月12日金曜日

ダブルルーメン?それともブロッカー?

麻酔科勉強会 担当:Q先生

「ダブルルーメン(DLT)?それともブロッカー(BB)?」

・DLTとBBを比較したメタアナリシス 
  ・39RCT DLTとBB比較
  ・DLT:留置時間短い、位置異常起こりにくい。 
  ・BB: 術後の咽頭痛、嗄声、気道損傷リスク低い。
・分離肺換気の適応
 ・大きくわけて二つ
   ・絶対的適応
    1. 他肺からの感染性分泌物・血液の流入阻止
       A. 肺膿瘍・膿胸などの感染症
              B. 大量出血(喀血)
    2. 開放気道が存在する場合
        A. 気管支瘻・気管支皮膚瘻
              B. 手術が主要気道に及ぶ場合
              C. 気管・気管支の損傷
    3. 一側の肺胞洗浄
              A. 肺胞蛋白症
  ・相対的適応
    1. 術野の視野確保
       A. 胸部大動脈瘤
       B. 肺全摘術
       C. 胸腔鏡手術
       D. 肺葉切除術
       E. 食道切除術
       F. 胸椎手術
・DLT、右用と左用
  ・左用DLT
    ・原則としては左用(90-95%)
  ・右用DLT
    ・左用DLTが適応でない場合
     ・気管偏位に伴い先端挿入困難な場合
      ・胸部大動脈瘤
      ・結核後遺症
      ・縦隔腫瘍などによる圧排
     ・左気管支に病変
      ・腫瘍などにより左気管支狭窄
      ・左気管支に腫瘍・潰瘍・瘻孔
      ・左肺全摘出手術
    ・主気管支長:右<左⇒安全域が狭い
    ・右主気管支が10mm未満の症例は使用できない(Benumofら)
・DLT挿入方法
 ・気管に留置してからファイバーで誘導する方法
 ・盲目的に左主気管支に進めてファイバーで確認する方法
   →出血のリスク、2ndカリーナに入ってしまうリスク
・DLTとBBの利点、欠点
 ・DLT: 留置に時間がかからない
     肺の虚脱が早い
          位置異常が少ない
          非換気肺にCPAP可能
 ・BB: 肺葉ブロック可能
     挿管困難時有利
     チューブ入れ替え不必要
・肺の虚脱についてRCTがある。
 ・randomized-controlled trial
 ・対象:VATSのために片肺換気を受ける40人の患者
 ・比較:2群比較。一方はBBを用い他方は左用DLT。
   ・結果:開胸から肺の完全な虚脱が得られるまでの時間はBB群で短く、
     各段階での肺の虚脱の程度もBBで高かった。
・重症肥満患者では?
 ・randomized-controlled trial
   ・対象:一側肺換気を必要とする重症肥満患者50人
 ・比較:DLT群 vs SLT+BB群
   ・結果:最初の試行で挿管が成功しなかったのは DLT群で3例
     BB 群で2例と同程度だった。
     肺分離後の肺の虚脱の程度にも群間で差がなかった。
・HPVのお話
・OLV麻酔開始時の通常の呼吸管理
 ・できるだけ長く両肺換気を維持
 ・FiO2=1.0を使用
 ・8~10ml/kgの一回換気量で片肺換気を開始(PCV>VCV)
    →肺保護戦略のため6ml/kg程度+PEEPの方が優れているという報告も。
 ・PaCO2=40mmHgとなるよう呼吸数を設定
 ・酸素化および換気の連続モニタリングの使用
・PEEPをどうするか。
 ・換気肺PEEP
   ・5cmH₂O以下にて開始
   (肺血管抵抗の過剰な上昇を防ぐため)
 ・非換気肺PEEP
   ・5~10cmH₂OはPaO₂を有意に上昇させる。
   ・5~10cmH₂Oは手術操作の妨げにならない。
   ・上側肺のCPAPによる下側肺への血流シフトは、
    PaO2の改善に有効である。