2017年4月19日水曜日

Postoperative Nausea and Vomiting

初期研修医勉強会  担当:H先生

「Postoperative Nausea and Vomiting」

・術後嘔吐の発生率は約30%、術後嘔気の発生率は50%
  →高リスク患者においてはPONVの発生率は80%!
・PONVは患者にとって不快
  →さらに早期離床を妨げ退院の遅れや再入院の原因となる。
  →PONVの発生率を低下させることが医療費の削減にまでつながる。
・嘔吐中枢は延髄網様体にある。
  →種々の求心性刺激に対して嘔吐を起こす。
  ・嘔吐を引き起こす求心路にはおよそ5つの経路がある。
   ①セロトニン(5-HT)によって活性化される化学受容器
    または機械的受容器から入り迷走神経を介する経路
   ②前庭迷路系から第Ⅷ脳神経を介する経路
   ③視覚中枢からの経路
   ④辺縁系を介する経路
   ⑤延髄の最後野にある化学受容器引金帯(CTZ)を介する経路
・PONV予防
 ・PONVのメカニズムは明らかにされていない。
 ・複数の受容体が関わっていることが考えられる。
 ・患者要因
   ・女性 (OR:2.57)
   ・PONVの既往 (OR:2.09)
   ・非喫煙者 (OR:1.82)
   ・乗り物酔いしやすい (OR:1.77)
   ・年齢 (OR:0.88,10歳上がるごとに)
 ・手術因子
   ・一般的にPONVのリスクとなる手術と言われている手術
     →腹腔鏡下手術、開腹/開胸術、形成、婦人科、脳外科、
      眼科(特に斜視手術)、泌尿器科、頭頸部手術など
   ・腹腔鏡下手術、婦人科手術、胆嚢摘出術は独立したPONVのrisk factor
   ・手術所要時間>60分でPONV発生率が上昇
 ・麻酔因子
   ・全身麻酔
   ・吸入麻酔;容量依存性に発症率が上昇
   ・亜酸化窒素(笑気)
   ・術後のオピオイド使用
    (術中のオピオイド使用は要因とはならない)
  →麻酔方法を工夫してみる
   ・全身麻酔
     →可能な症例は局所麻酔下で手術を行う;発生率1/9に

   ・吸入(揮発性)麻酔
     →プロポフォールによるTIVAを行う
      高リスク群において、PONVの発生率が約25%低下
   ・亜酸化窒素(笑気)
     →使用しない
   ・術後のオピオイド使用
     →使用量を最小限に留める
      ・NSAIDsによる鎮痛、局所麻酔薬のみによる硬膜外鎮痛など
・予防薬
  ・セロトニン受容体拮抗薬
    ・腸管からの迷走神経刺激に基づく
     セロトニン分泌による嘔吐中枢の刺激を遮断
    ・嘔気よりも嘔吐に対してより効果を持つ
              (POV;NNT=6、PON;NNT=7)
    ・副作用
      ・セロトニン症候群
      ・QT延長作用
         →容量依存性。
          先天性QT延長症候群の患者では避けるべき。
          不整脈のリスクが高い患者においてはECGモニターを。
    ・5-HT3拮抗薬は最もcommonなPONV対策である@アメリカ
      →しかし、薬価が高価(\4,290/4mg)であり、
       その上日本では抗がん剤投与時以外は保険適応外である
    ・手術終了時に4mg投与することが推奨されている
  ・デキサメタゾン
    ・PONVの発生を約25%予防する (NNT=4)
    ・この結果はどの手術様式や全身/脊髄麻酔のいずれにもあてはまる
    ・PONV予防のメカニズムははっきりとはわかっていない。
    ・おそらくは手術に起因する炎症を減らすためであると言われている。
    ・日本では保険適応外=適応外使用 (cf. \97/1A)
    ・経静脈的に4~5mgを麻酔導入時に投与する。
      →4~5mgの投与と8~10mg投与はPONV予防の有効性は同等であった。
    ・副作用について
      →臨床的に重度な高血糖や創部感染の頻度は増加しない
      →しかしIGTやDM、肥満患者では8mg投与で
       投与後6~12時間に高血糖が生じるという研究があり、
       糖尿病の患者に投与するのは相対的禁忌である
       (4~5mgの投与が推奨されているのは、上記も要因となっている。)
    ・一度生じたPONVの治療には予防投与時ほど有効ではない  
  ・ドロペリドール
    ・中枢神経系においてドパミン、GABAの伝達を阻害。
    ・CTZにおいて受容体を遮断することにより、制吐作用を発現。
    ・オンダンセトロンと有効性は同等(NNT=5)
    ・手術の最後に投与することが推奨されている:0.625~1.25mg IV
    ・日本では保険適応外=適応外使用
    ・副作用
      ・QT延長作用:QT延長症候群の患者ではTdPに至る可能性あり
         →2001年にFDAで警告が発せられて以降、
          第一選択ではなくなった
         →短時間での使用なら問題ない、
          オンダンセトロンとQT延長作用について
          差異はないなどの見解もある。
            →現在も多くの国で用いられている
      ・間代性けいれん
  ・ニューロキニン受容体拮抗薬
    ・ニューロキニンは前嘔吐(pro-emetic)物質である
    ・術後~24時間のPONV予防効果ではオンダンセトロンと同等である。
    ・術後24~48時間では、嘔吐予防にオンダンセトロンより有用である。
    ・新しい薬剤のため、他の薬剤と比較し研究が少ない??
    ・日本において抗癌剤使用患者に用いられることはあるが、
     PONVに対しては保険適応外である。
  ・抗コリン薬
    ・正確な機序は判明していない。
    ・経皮スコポラミンがPONVの予防に用いられている。
    ・作用発現が遅いため、PONVの治療には適さない。
    ・効果発現までに2~4時間かかるため、麻酔開始の2~4時間前に貼る
    ・オンダンセトロン、ドロペリドールと同等の効果をもつという研究あり
    ・副作用
      →鎮静、視覚異常、ドライマウス、めまい
      →閉塞性緑内障の患者への使用は禁忌
    ・やはり、日本での保険適応はない…
  ・ドパミン受容体拮抗薬
    ・嘔気時に10mg(1A) IVが適応となっている
       →メトクロプラミドは制吐作用が弱く、
        10mgの投与ではPONVの発症率の低下につながらないという研究も。
    ・20mg以上の投与で効果が認められ、容量依存性に効果が上昇する。
     →しかし大量投与については疑問が残る。
     →これに代わる薬剤がないので日本では依然用いられている
・非薬物療法
  ・輸液
    →適切量の輸液がPONVの発生を減少させる!?
    →晶質液と膠質液との間に差異はない
    →全身状態や手術法など全般を考慮して行うかを決定する。
  ・ツボ刺激
    →P6(Pericardium 6;内関)というツボに
     針刺激や圧迫刺激を加えるとPONVの予防効果がある。
    ・P6;長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間で
       手首のしわから3 横指(2インチ)中枢側にある。
    ・麻酔導入前後のいずれに刺激しても効果に差異はない
・リスクに対する介入
 ・risk factorなし
   ・PONV予防薬の投与は必要ない
   ・しかし嘔吐の合併の可能性の手術を行う場合は予防薬の適応
 ・risk factor1つ
   ・予防薬の単一剤投与
   ・デキサメサゾン、アプレピタント、経皮スコポラミンは
    長時間作用効果がありPONVの発生を減少させる
 ・risk  factor複数
   ・2,3の薬剤を併用。
   ・可能であれば吸入麻酔薬の使用を回避=TIVA
   ・術後のオピオイド使用を最小限にとどめる
・発症後の治療について
 ・予防ほどの有効性はない。
 ・セロトニン受容体拮抗薬が最も一般的に用いられており、
  十分な研究が行われている唯一の有効な治療薬と言われている。
 ・デキサメサゾン、ドロペリドールも一定の効果がある。
 ・日本では適応がなくメトクロプラミドが用いられている。
 ・予防治療を行ったのにも関わらずPONVが進行した場合は、
  別の作用機序の薬剤を選択することが推奨されている。


GICUで使うお薬あれこれ

ICU勉強会  担当 M先生

「GICUで使うお薬あれこれ」

・GICUでよく使うお薬を改めてまとめてみました。
・アセトアミノフェン
  ・50%鎮痛力価:NNT 3.5(NSAIDsは2-3程度)
  ・1回1,000mgまで、4-6時間おきに投与、最大4g/日まで投与可能
   (アルコール依存症、低栄養患者には投与量1日2g以下にする)
  ・天井効果があり1回量1,000mg以上を投与しても効果は増大しない
   →天井効果がないのは強オピオイドのみである。
・POAF予防薬
  ・POAFについて
    ・開心術後の20-50%に発症(CABG:約30%,弁置換術:約40%)
    ・胸部外科手術でも0.6-3.6%程度は生じる
    ・術後死亡率の増加につながる
    ・周術期脳血管障害、急性腎障害、心不全のリスク
  ・POAFリスク
    ・高齢者
    ・COPD
    ・弁膜症手術
    ・緊急手術
    ・低心機能(EF<30%)
    ・IABP挿入
    ・腎機能障害(eGFR<15ml/min/1.73m2)
  ・使われるお薬として・・・
   ・βブロッカー
     →ACCP 2005, CCS2010, ACCF/AHA/HRS2011の
      いずれのガイドラインでも第1選択となっている。
     →術前に投与されている場合は術後も継続する。
   ・アミオダロン
     →HR<60, sBP<100, 徐脈性不整脈など
      βブロッカーが使いにくい場合に考慮される。
・術後抗血小板薬
  ・アスピリン
   ・CABGにおいて・・・
    ・SVGグラフトの開存率を有意に改善する。
    ・内胸動脈グラフトの開存率の改善は示されていない。
      →もともと10年開存率≧90%と高いため
    ・術後イベント(心筋梗塞・脳梗塞・腎不全)の抑制が示されている。
    ・術後24時間以内には再開すべき。
   ・TAVI後はDAPTを導入する。
・スタチン
 ・適応は?
   ・ASCVD(atherosclerotic cardiovascular disease)既往
   ・LDL-C≧190mg/dL
   ・40-75歳のDM患者
   ・10年-ASCVDリスク≧7.5%以上
・鼻腔MRSA治療薬
  ・術前鼻腔MRSA検査の適応
   →ルーチンでの検査は推奨されない
  ・MRSAハイリスク患者
    →MRSA感染既往、最近の医療・福祉施設の入院・入所歴、
     血液透析など
  ・重篤・難治性感染のハイリスク手術
  (心臓手術・人工関節置換術)を施行する患者
  ・バンコマイシン(VCM)のSSI予防効果
             (vs. βラクタム抗菌薬)
    ・MRSA→0.44(p=0.05)
    ・MSSA→2.79(p<0 .001="" p="">    ・緑膿菌→0.96(P=0.95
   →MRSA陰性ならCEZのみ(VCMは不要)
   →MRSA陽性ならVCMは有効だが抗MSSAにCEZも必要
・ストレス潰瘍の予防
 ・潰瘍を予防する目的
    →ICU患者の75%-100%は入室後24時間以内に粘膜病変をきたし、
     自然経過ではその5-25%が出血に発展する。
    →重症患者において消化管出血が起きた場合、
     致死率は20-30%に達すると言われる。
    →しかし胃酸を抑制することにより感染症を発症しやすくなる
 ・潰瘍予防を推奨
   ・凝固異常(PLT<50,000/mm3, PT-INR>1.5)
   ・48時間以上の人工呼吸器管理
   ・1年以内に消化管潰瘍・出血をきたしている
   ・GCS≦10
   ・熱傷面積>35%
   ・肝部分切除
   ・多発外傷(injury severity score≧16)、
   ・肝不全
   ・脊髄外傷
   ・肝・腎移植、
   ・敗血症
   ・1週間以上のICU入室
   ・6日以上の潜血
   ・ヒドロコルチゾン250mg/day以上のステロイド投与
 ・H2RA vs PPI
  ・PPIの方が臨床的に重要な消化管出血を減少させるという研究が多い。
  ・医療関連肺炎の発生率はPPIの方が多いとされる研究が多い。

 臨床工学技士さん主催、人工心肺ハンズオン

2017年4月12日水曜日

2017年度新体制

当院麻酔科・集中治療部は新たに美馬部長の下、
新体制となって2017年度を迎えることとなりました。
今年も東は京都、西は沖縄から、
新たに5名の専攻医(後期研修医)を迎えることとなりました。








新専攻医たちもスタッフ医師の指導の下、
すでに手術室で活躍しています。
新たに来て頂いた2名のスタッフに加え、
西市民病院から研修に来られた後期研修医の先生1名、
および産休から復帰された2名のドクターを加えて、
さらに強力な体制となりました。
今後ともスタッフ一同、
若手ドクターの教育にはさらに力を入れていこうと思います。

2017年3月25日土曜日

NCPRアルゴリズム2015年ガイドラインを復習

麻酔科勉強会  担当:M先生

「NCPRアルゴリズム2015年ガイドラインを復習」

・JRCガイドラインでの初期評価
 ・早期産であるか
 ・呼吸・啼泣の消失
 ・筋緊張の低下
 →いずれも認めない場合はルーチンケアへ移行する。
 →清拭・保温しカンガルーケアなどへ
・蘇生行為の介入及び評価
 ・基本はABCアプローチ
  ・Air way
  ・Breathing
  ・Circulation
   ・評価は自発呼吸の出現と心拍数>100
・新生児の蘇生が必要となる頻度
 ・正期産時では誕生後10-30秒後に自発呼吸が開始される。
 ・85%が自然発生し
 ・10%が刺激により開始され
 ・3%に陽圧呼吸が必要となり
 ・2%に挿管管理が必要となり
 ・0.1%に胸骨圧迫や薬剤投与を要する
  →約15%が何らかの補助が必要で5%では陽圧呼吸以上の介入が必要
・Apgar Score
 ・1952年ヴァージニア・アプガーにより考案されたスコア
 ・5つの項目×0-2点でスコアリング
 ・7点以上が正常
 ・4-6点が軽度仮死
 ・3点以下が重症仮死と判断される。
 ・出生後1分時および5分時に評価
   ・1分時スコアは出生時の仮死の有無の評価
   ・5分時は神経学的予後の判断指標。(<7 p=""> ・児の評価として簡便に使用できるが・・・
  ・チアノーゼはそもそも正期産時でも回復に数分かかる。
  ・神経学的予後の指標となるが個々の症例でかなり振れ幅が多い
  ・JRCおよびAHA/AAP/ILCORのガイドライン
    →Apgar scoreのみで新生児の蘇生の評価を行うべきではない。
  ・1分値と5分値の比較による蘇生行為に対する反応性の評価としては有能
・蘇生行為のSTEP
 ・呼吸
 ・清拭・保温・刺激・吸引・気道確保
   ・羊水の清拭・保温による低体温の予防
   ・上気道吸引
   ・刺激
     →足底をさする・背中をさするなど
     →これ以上の刺激はかえって児に損傷をきたすため避ける。
 ・呼吸補助
   ・PEEP/IPAPを適宜行いサポートする。
   ・蘇生の介入は自発呼吸の有無と
    中心性チアノーゼの有無および心拍数で判断
   ・その後のモニタリングはチアノーゼの度合いよりも
    SpO2および自発呼吸の出現の有無および心拍数で評価する。
   ・目標等すべきSpO2
     ・出生後30秒の時点での自発呼吸の有無を評価
     ・心拍数>100で
       ・1分値>60
       ・3分値>70
       ・5分値>80
       ・10分値>90
     ・あくまで目標でありSpO2がうまく測定できない場合や
      この値以上でも自発呼吸がなく
      PR<100 p="">   ・呼吸回数は40-60/minを目標とする。
   ・FiO2は前述のSpO2を目標としつつ
   ・正期産であればRA
   ・早期産であれば 0.21-0.3で開始する。
     →なるべく高濃度酸素は避けて開始。
      自発呼吸の回復などがみられなければ適宜FiO2をup。
   ・圧は25-30前後までで
 ・挿管
 ・循環
 ・胸骨圧迫
   ・心拍数60/min 以下でcpr開始
   ・3:1で1サイクル2秒
   ・胸郭包み込み両拇指圧迫法にて行う
   ・胸骨下1/3を1/3へこませる
 ・薬剤投与
     ・Epinephrine 0.01mg-0.03mg/kg iv
     ・もしくは0.05mg-0.10mg/kg 気管内投与
・アルゴリズムで変わったこと
 ・評価に皮膚の色調がなくなった。
 ・心拍数の評価にパルスオキシメーターだけでなく
  ECGモニタリングが加わった。
 ・パルスだと徐脈をオーバートリアージする可能性がある。
 ・ECGのほうが情報量が多い
 ・その情報を活用できるか不明



胸骨正中切開後の心肺蘇生

麻酔科勉強会 担当:O先生

「胸骨正中切開術後の心肺蘇生」

・心臓手術後の心停止は原因が限定されていることが多い
・Ope室では道具、薬剤が揃っている
  →以上2つの理由により蘇生の可能性が高い
・しかし胸郭内構造物(胸骨ワイヤーなど)や心血管縫合部の脆弱性のため、
 外傷リスク(二次性外傷)が高いことを念頭に置く
・通常のCPRとは蘇生方法が異なることを知っておく必要がある。
・心停止、蘇生の頻度
 ・入院患者における予期せぬ心停止の頻度は術後、非術後問わず0.4~0.5%
 ・心臓手術後は0.7~2.9%と心停止の頻度が高い
   ・非心臓手術後の心停止後の死亡率は70~80%
   ・心臓手術後の心停止後の死亡率は20%~60%←低い
   ・症例数が少ない(150症例/年)病院では死亡率が高い傾向にある。
   ・当院の症例数:開心術300症例/年
     →心臓手術後の心停止患者は蘇生できる可能性が十分にある。
・心臓手術後の心停止のタイミング
 ・術後24時間以内に起こる。
 ・ICUで起こることがほとんどである。
  →ICUのスタッフ、麻酔科医は対応に慣れている。
 ・搬送中の心停止は比較的稀(時間が短いから)。
  →手術室のスタッフ、麻酔科医は対応に慣れていない。
 ・当院においても数年に1度の頻度でope室で起こる。
 ・手術室プロトコールの作成、シミュレーショントレーニングの必要がある。
・心停止の原因
 ・VFおよびVT:約70%
 ・Asys(心静止):約17%
 ・PEA(無脈性電気活動):約13%
  ・除細動で2分以内に心拍再開した場合の生存率は39%、
   それ以降は22%まで低下する。
  →VF,VTの場合は速やかに除細動を行うべき。
・心停止の原因(非VT/VF)
  ・nonVF/VTの心停止の原因4Hs4Ts
  ・4Hs
    →hypoxia、hypovolemia、hypo/hyperkalemia、hypothermia
  ・4Ts
    →tamponade、tension pneumothorax、thromboembolism、toxin
・EACTSガイドライン
・通常のCPRとの違い
 ・VT/VFの場合
   →1分以内に除細動が行える場合は胸骨圧迫を即座に行うべきではない
 ・徐脈性不整脈から心停止になった場合まずはペーシング。
 ・ルーチンにアドレナリン(ボスミン)の投与を行うべきではない。
 ・蘇生の見込みが乏しい場合は再開胸を行う。
 ・PCPS(V-A ECMO)の使用も考慮。
・胸骨圧迫すると・・・
 ・心臓血管外科手術では二次性外傷のリスクが高い
 ・致死的頻度を検討した研究はない
 ・ただし・・・
   ・ペーシングで蘇生の見込みが乏しい場合
   ・ただちに除細動やペーシングができない場合、
   ・除細動やペーシングの適応ではない場合
   →すみやかに胸骨圧迫を行う
・手術室での対応
 ・手の空いている人はCPA call。
 ・再開胸の準備は速やかにしておく。
 ・除細動、ペーシングが遅れるなら胸骨圧迫、BLSを開始する。
 ・再開胸の準備
  ・再開胸の準備は、なるべく速やかに開始する。
  ・再開胸に最低限必要な道具5つは以下のとおりである
   ①胸部外科用一体型滅菌ドレープ
   ②メス
   ③ワイヤーカッター
   ④ワイヤー持針器または鉗子
   ⑤開胸器
  ・これらの道具はICUにあるミニ再開胸セットに全て含まれている。
  ・その他吸引器、吸引チューブ、滅菌ガーゼも有用、ほぼ必須
・再開胸までの時間を短縮
 ・心停止後再開胸までの時間が10分未満の場合
   →10分以上の症例と比較して生存率が48%vs12%(P≦0.001)と
    優位に高いとする報告がある。
 ・再開胸までの時間を短縮することは非常に重要である。
 ・特に再開胸の準備は再開胸するしないに関わらず行っておくことが重要。
・機械的循環補助の考慮
 ・再開胸時には機械時補助循環が必要である可能性
   →人工心肺とV-A ECMOが選択肢にある。
 ・ブラッドアクセスのことを考慮するとV-A ECMOが第一選択肢として挙がりそう。
・少なくとも手術室蘇生には6人必要
 ①胸骨圧迫係
   ・胸骨圧迫をA-line波形を見ながら100回/minで行う。
    心臓血管外科医が行うことが望ましいかもしれない。
 ②気道、呼吸管理係
   ・純酸素にしpeepをoff。バックマスクに切り替え、
    呼吸音(特に気胸)をcheck。チューブや回路に異常がないか確認。
    特別な理由がない限り、麻酔科医が担当。
 ③除細動係
   ・除細動を接続・設定し、実行する。
 ④チームリーダー係
   ・CPRがプロトコールに従って行われていること、
    各役割に人が割り当てられ、
    適切に動いているかを確認、指示出しを行う。麻酔科指導医?
 ⑤薬剤、シリンジを運ぶ人
 ⑥コーディネーター(調整役)
・VT/VFの場合
 ・まずは2相性(当院ope室の除細動は全て2相性)で
  150Jで連続3回除細動を行う。
  ※連続3回とあるが、1回ごとに心電図波形checkを行い、
   心拍再開時にはもちろん、除細動は終了する。(続けない)
 ・1分以内に除細動が行える場合は胸骨圧迫を即座に行うべきではない
 ・3回の除細動後も心拍再開しない場合は
  2分ごとに除細動、波形checkを行い、BLSをただちに開始する。
 ・1分以内に除細動ができない場合は胸骨圧迫をためらうべきではない。
 ・除細動は単相性より二相性が安全かつ効果が同等もしくは高い
 ・除細動による成功率は1、2、3回目で78%,35%,14%と低下していく。
  4回目以降は5%を切る。
  →3回の除細動後は蘇生の見込みが乏しく再開胸が必要。
・Asysまたは高度徐脈の場合
 ・直ちにペーシングを行う。
   →出力は最大。可能であれば設定はDDDもしくはDOO90bpm
 ・上記無効例もしくはすぐにペーシングできない場合は、BLSを直ちに開始する。
 ・続いてアトロピン3mg(←!)投与。
 ・ワイヤペーシングがない場合や無効例では体外式を考慮。
 ・心拍再開もしくは再開胸が始まるまでBLSを続ける。
・PEAの場合
 ・ペーシングを行っている場合は直ちにペーシングをOFFにし波形をcheck。
  ←VFがペーシングによって隠れている場合がある
 ・VFだった場合には除細動から始まるプロトコールへ。
 ・PEAだった場合はただちにBLSを開始。
   →心拍再開もしくは再開胸が始まるまで続ける。
・補足
 ・再開胸時には開胸心臓マッサージも考慮してよい
   →A-lineで確認しながら100bpmで収縮期血圧>60mmHg
 ・AHAにアトロピンの記載なし
 ・アドレナリン使用する場合は100μg-300μg
 ・胸骨部分切開、小開胸ポートアクセス手術、低侵襲冠動脈バイパス術後でも
  本プロトコールでCPRを行うべきである。
 ・TAVIでも本プロトコールに従ってCPRを行った方がいいかもしれない。
・気道と換気について
 ・もし人工呼吸器で管理されている場合はFiO2:100%、PEEPはoff
 ・100%酸素のBVMに変更し、挿管チューブの位置とカフ圧をcheck。
  ←そのまま気胸や血胸の除外目的で両側の呼吸音を聴取
 ・緊張性気胸が疑われたら第2肋間鎖骨中線に太いカニューレを留置
 ・上級医の指示なしにアドレナリンを投与しない
 ・IABPが留置されている場合は圧トリガーに変更する
 ・除細動やペーシングが1分以内に開始できなければBLS


全身麻酔後の視機能障害

麻酔科勉強会 担当:O先生

「全身麻酔後の視機能障害」

・postoperative visual dysfunction:POVD
 ・非眼科手術後の視機能障害
 ・脊髄脊椎手術で0.03~0.2%、心臓血管外科手術で0.06~0.33%の発症率
 ・この発症率に含まれるのは失明および重度の視機能障害のみ
 ・無自覚や無症候性の視機能障害も含めるとさらに増える可能性もある
・POVDがなぜ問題か
 ・一度発生するとQOLの低下やリハビリの開始困難
  →予後に影響しかねない
 ・症状の現れ方が軽微なことが多い
 ・麻酔科医や外科医がPOVDに精通していない
  →診断が困難もしくは遅れる可能性がある
・発症機序
 ・実はあまり詳しくはわかっていない
 ・以前は眼圧の上昇が主な原因と考えられていた
 ・現在では
   ①外科的損傷
   ②虚血
   ③梗塞
    の3つが主な原因と考えられている
・眼圧との関係
  ・眼圧の上昇とPOVDとの直接的な因果関係は
   明らかになっていない
  ・頻度の最も多い虚血性視神経症では眼圧上昇や
   網膜、脈絡膜の異常を認めないことが多い。
  ・しかし緑内障はPOVDのリスクファクターであるため、
   眼圧を全く気にしなくても良いわけではない。
・POVDの分類
 ・原因によって、大きく3つに分けられ、更に細かく5つに分類
  a)虚血性視神経症
   ①前部虚血性視神経症(AION)
   ②後部虚血性視神経症(PION)
  b)網膜動脈閉塞症
   ③網膜中心動脈閉塞症
   ④網膜動脈分枝閉塞症
  C)皮質盲
a)虚血性視神経症
 ・前部か後部かの他に動脈炎性か非動脈炎性かに分類。
 ・大半は非動脈炎性。腹臥位や脊髄脊椎手術に多い。
 ・症状は水平半盲、失明、中心暗点、対光反射の減弱、欠如など
  ①前部虚血性視神経症(AION)
   ・視神経乳頭や強膜管内の視神経が虚血になり発症
   ・視神経乳頭が障害
    →眼底所見で視神経乳頭の蒼白や浮腫、視神経周囲の出血
   ・心臓血管手術ではPIONより多い
  ②後部虚血性視神経症(PION)
   ・脊髄脊椎手術後ではAIONより起こりやすい
   ・後部視神経は軟膜循環によって栄養
   ・PIONの病変部位は視神経乳頭より後ろに存在するため、
    初期の眼底所見は正常である。
b)網膜動脈閉塞症
 ・心臓血管外科手術後に起こることがある。
 ・人工心肺後の塞栓も原因になる
 ・中心動脈型と動脈分枝型が存在する。
 ・対光反射の欠如もしくは減弱が起こることがある
 ・眼球筋機能不全などの眼球運動障害が起こることもある。
  ③網膜中心動脈閉塞症
  ・網膜全体の虚血により視力低下や失明が起こる。
  ・眼底検査では蒼白な網膜やチェリーレッド斑、
   網脈動脈の狭小化が特徴的
  ・視機能の予後は悪く、視力の改善はほとんどない。
  ④網膜動脈分枝閉塞症
  ・塞栓などで閉塞した箇所から先の網膜だけ障害
  ・それ以外の網膜は正常に機能
  ・眼底検査では塞栓の存在や部分的な網膜の蒼白化を認める
  ・症状は虚血部分に相当する部位の視野欠損
  ・黄斑が正常であれば視力低下は起こりにくい
c)皮質盲
 ・外側膝状体、視放線、後頭葉の大脳視覚領に至る視経路の損傷に起因
 ・脳腫瘍(下垂体腫瘍、後頭葉腫瘍)、外科的損傷、虚血や梗塞が原因
 ・網膜~外側膝状体までの視経路は正常
   →対光反射や眼底検査は正常
 ・空間認知および大きさと距離の関連性感覚の障害、
  注視力の制限、視覚的威嚇への無反応が特徴的
 ・両側の後頭葉の損傷で完全盲、局所的な損傷で同側性半盲
・POVD発症後の対応
 ・初期の訴えは視野のぼやけと視力異常
 ・原則すぐに眼科医へコンサルトする。
 ・瞳孔反射、眼球運動、視野の確認を行っておく。
  眼底検査、遠近調節反射、眼圧も可能であれば。
 ・麻薬によって瞳孔症状は見落とされる危険性あり
 ・皮質盲にはCTおよびMRIが有用
・治療
 ・虚血性視神経炎
   →アセタゾラミド(網膜血流の増加)、
    マンニトール、フロセミド
 ・網膜動脈閉塞症
   →眼球マッサージ(緑内障で禁忌)、
    アセタゾラミド、二酸化炭素吸入(血管拡張)
 ・皮質盲
   →有用な薬物はない。進行の予防のみ
 ・これらはすべて十分な効果は立証されていない。
 ・視機能の予後は全体的に不良である。
   →つまり最も重要なのはPOVDの予防にある。
・予防
 ・眼球への外的圧力を排除
 ・マスク換気時のマスクによる圧迫に気を付ける
 ・腹臥位手術でのヘッドレストの使用時に眼球位置確認
 ・眼球付近での外科医の腕の圧迫に気を付ける
 ・モニター類およびコードによる圧迫に気を付ける
・POVD予防のASA提言
  ・6.5時間以上の長時間手術、循環血液量の44.7%以上の出血を認める
   手術の患者を高リスク患者と認める。
  ・高リスク患者では動脈圧モニタリング、
   および中心静脈圧モニタリングが推奨される。
  ・眼球への直接的圧迫を回避し、
   高リスク患者では頭を心臓より高い位置で
   ニュートラルポジションを維持。
   眼球に圧迫がないか、15分毎に確認する。
  ・複雑な脊椎手術を高リスク患者に施行する場合は
   段階的手術法にすることも考慮
  ・高リスク患者の血圧管理は術前の24%以内の平均血圧、
   または84mmHg以上の収縮期血圧を維持する。
  ・高リスク患者では輸液に関して血管内容量維持のため、
   晶質液に加え、膠質液も使用する。
  ・高リスク患者ではHb>9.4g/dL、Ht>28%を維持する。



2017年3月16日木曜日

冠動脈まとめ

麻酔科勉強会 担当:I先生

「冠動脈のまとめ」

・機能的冠血管分類
 ・太い伝導血管系
   ・冠動脈造影で見える。
   ・心外膜冠状動脈は太さ約300~5000μm。抵抗は少ない。
 ・細い抵抗血管系
   ・小動脈は太さ約100~250μm。心筋内を走行する。
   ・細動脈は太さ約10~100μm。最も抵抗が高い。
    →毛細血管へ
 ・静脈系→冠静脈洞へ
・安静時の冠血流量は75〜80ml/100g/分(心拍出量の5%)
・心臓の酸素利用率は70〜80 %と高い
  →腎臓・肝臓・脳の酸素利用率は10〜20%
・心筋酸素消費量が最大となる運動時,
 →冠血流量は4〜5倍に達し 酸素利用率も90%近くになる
・心筋酸素需要バランス
 ・心筋酸素供給
    ・主に動脈血の酸素含量と
    冠血流量(coronary blood flow:CBF)により規定される。
     ・酸素含量(mg/dl)
        =Hb濃度×1.34×酸素飽和度/100+0.003×酸素分圧
     ・冠血流量
    =冠血管床の圧較差(coronary perfusion pressure:CPP)
               /冠血流抵抗(coronary vascular resistance:CVR)
・左室と右室への冠血流
  →収縮期と拡張期の優位性に違いがある。
  ・左心室
    →心筋壁が厚い。
    →収縮期には心筋収縮により心筋内の小動脈や細動脈、
     毛細血管が圧迫され血流が途絶する。
    →拡張期には心筋の弛緩によりこれらの血管に対する
     圧迫が解除され、急速に血流が再開する。
  ・右冠動脈は収縮期と拡張期どちらも血流が維持されている。 
・冠血管床の圧格差
 ・左冠動脈の血流……拡張期優位のパターン
  ・大動脈拡張期圧が冠動脈の灌流圧として重要
  ・動脈硬化に伴う大動脈コンプライアンスの低下や大動脈閉鎖不全では 
   大動脈拡張期圧が低下し左冠動脈の循環に悪影響を及ぼす
  ・心拍数の増加により拡張期の著しい短縮が生じ、左室心筋への 
   灌流に大きな影響を及ぼす。
 ・右冠動脈の血流……収縮期と拡張期の両相パターン
  ・重篤な肺動脈高血圧など右室圧の上昇に伴い
   収縮期の灌流圧は縮小し右冠動脈の収縮期血流は低下する。
・冠血管抵抗
 ・血液粘稠度
 ・冠動脈の収縮・拡張→①代謝性調節
             ②筋性調節
                       ③血流調節・・・ここまで自己調節能
             ④自律神経系因子
                       ⑤内分泌性因子
                       ⑥血管内皮依存性調節因子
 ・冠動脈の血管外圧縮力による調整
・代謝性調節について
 ・アデノシン↑
 ・心筋内酸素分圧↓、二酸化炭素分圧↑
 ・乳酸↑
   →冠血管抵抗を低下させる。
・冠動脈の血管外圧縮力による調整
 ・心内膜は収縮期に血管系が小さくなりやすい。
  →心内膜の方が虚血に陥りやすい
・心筋酸素需要
 ・心拍数
   ・1心拍ごとに消費される酸素消費量に変化がない
    →毎分の酸素需要量は心拍数の増加に比例して増加する
   ・交感神経系の亢進により心拍数が増加
    →同時に心収縮力も増加する
    →心拍数の増加以上に酸素消費量が増加している
 ・心収縮力
 ・壁応力
  ・Laplaceの法則
      →球体の壁にかかる応力は内圧と球の半径に比例し、
    壁厚に反比例する
   →壁応力=圧×半径/(2×壁厚)
  ・これを心臓に置き換えると…
    ・壁応力=収縮期心室にかかる後負荷
    ・圧=収縮期に心室壁にかかるピークの貫壁性圧較差
    ・半径=拡張終期の心腔内の半径
  ・例えば左室肥大→壁厚↑→壁応力↓するが
   心筋重量の増加で酸素消費量は増加
  ・例えば左室瘤→左室径↑+壁厚↓で
   壁応力↑し酸素消費量は増加
・冠動脈疾患に対する治療
 ・安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術
  ・初期積極的薬物治療  
  ・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
  ・冠動脈バイパス術(CABG)
・PCI or CABG?
 ・SYTAX試験(2009年)
   ・冠動脈3枝病変または左冠動脈主幹部病変LMT(またはその両方) 
    を有する患者1800人を対象に、無作為割り付けでPCIとCABGを比較。
 ・術後1年時の死亡・心筋梗塞・脳梗塞・
  再血行再建術の複合エンドポイント発生が、
  PCIよりもCABGの方が低く、
  3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変の
  標準治療はCABGであると結論。
・OPCABGは有利か?
 ・OPCABからCCABへ移行例では30日死亡率4~7%と不良
 ・OPCABに優位に腎保護効果があるとする報告は少ない